とする.このとき集合のすべての元はに属するので,はの部分環と看做す.そしては環でもある.問題は,が環であるにもかかわらず,が部分体及び体を成すのか? ということである.
- の性質はに属することによってキャンセルされないのか?
すなわち,よりのすべての元の性質は環に制限されるのではないか.もしも,部分環が部分体及び体であるなら,可逆元と逆元を1個ももたない体を認めることになる.するとこれは体の定義に反する.
実際,定義1.2.3(9項)の可逆元と逆元を確認すると
と表示できる.このとき∧-除去を適用すれば,可逆元あるいは逆元を1個ももたない体が存在する.つまり,体という名前で呼ばれるが,実質的には環の性質しかもたない集合がある.もし,定義1.2.6の体の定義に依るなら,環の部分体という概念を捨てなければならない.
- まとめ
体の定義を変えるか,環の部分体という概念を捨てる他ない.たとえば,体自体に∧-除去を用いると同じ問題が起こらないか,と考えられるが,まさに人間は物自体を認識することはできないので,体自体が与えられていれば,それに∧-除去を適用することはできない.この∧-除去のような推論規則というのは,メタ言語・メタ認識というように対象(言語)を操作するものであり,この部分体の問題は,数学に関して何が対象なのか? というのが問われるものだといえる.私は簡単に物自体という言葉で説明をしてしまったが,これ以上考えることは哲学の問題だと思われるので,ここには書かない.しかし,いつか環の部分体という概念を使用することができるような言語を獲得したい.