- 名辞と概念
全く同一のものはない.しかし,個別にそれぞれ異なる名辞を与えなくてはならない,とすると百の机に百の名辞が必要になる.概念(言葉)とは百のものに百の名辞を付けることではない.概念の把握は存在の全的把握ではなく,我々の必要に応じた部分的把握(存在の部分的構成)である.
- 徴表(偶有性と共通性)
ここに,百の机があり,それぞれ異なる性質をもつ.これらを区別する性質を徴表とよぶ.
① 異なる(特有な)徴表:偶有性(非本質的性質)
② 共通の徴表:共通性(本質的性質)
また,①でかつ②ということもある.では,百の机のいう「机」とは何か? 我々は偶有性を捨て(捨象),共通性を抽象している.これが「机」なのだ.
- まとめ
概念や言葉による存在の把握は抽象であり,存在そのものではない.概念や言葉そのものに対応する存在はない,ともいえる.たとえば,机という概念そのものに対応する机の存在はない.存在するのは百の机である(事実).