日記2

自然演繹を積極的に用いたい.

定理 1.1.23 第1同型定理 5項

 x,y,z,......:1つの束縛変項

 a,b,c,......:1つの自由変項

 f:G→G' 群準同型写像

 \mathrm{Ker} f:=\{x∈G|f(x)=e\}⊂G

 \mathrm{Im} f:=\{f(x)∈G'|x∈G\}⊂G'

 =\{y∈G'|f(x)=y\}

 α:G/\mathrm{Ker}f→\mathrm{Im}f 写像

とする.このとき

(ⅰ)  \mathrm{Ker} f \triangleleft G

(ⅱ)  G/\mathrm{Ker} f \cong \mathrm{Im} f

が成立する.

(証明の方針)

(ⅰ)について

  \mathrm{Ker} f⊂Gより \mathrm{Ker} fの元はすべて Gに属するので, \mathrm{Ker} fは群を成し, \mathrm{Ker} f≤Gである.いま,便宜のため

 K:=\mathrm{Ker} f

と置く.このとき ∀x=[a]_Gに対して

 aK=Ka

を示す.そのために

(ア)  aK⊂Ka

(イ)  Ka⊂aK

をいう.

(ア)について

 ∀z[z∈aK]\vdash ∀z[z∈aK→z∈Ka]

を証明する.

 aK⊂G i.e.  ∀z[z∈aK→z∈G]

 Ka⊂G i.e.  ∀w[w∈Ka→w∈G]

であるから

 ∀z∀w=[b]_G

を選べば

 b∈aK→b∈Ka

より

 ∀z[z∈aK→z∈Ka]

が成立する.すなわち

1 (1)  ∀z[z∈aK] 前提

1 (2)  b∈aK 1. ∀-除去

3 (3)  b∈Ka 仮定 ☆

1 (4)  b∈aK→b∈Ka 2-3. →-導入

1 (5)  ∀z[z∈aK→z∈Ka] 4. ∀-導入

(イ)も同様.

☆について

 aK Kaに対して,すべての元は Gに属するので, aK Kaの元を Gの元として看做す.

i.e.  ∀z=[b]_G  ∀w=[b]_G

つまり

 aK=\{z∈G|z=ak_1\}⊂G

 Ka=\{w∈G|w=k_2a\}⊂G

 b=ac   ∀k_1=[c]_K

 b=da   ∀k_2=[d]_K

に対して

 b∈aK→b∈Ka

より☆の仮定は許される.

  • 感想

 ☆の部分を書いていて想ったことは, aK及び Kaの元を Gの元と同一視するということは, aK⊂Gという等号をぼかした記号を

 aK⊆G i.e.  aK⊂G∨aK=G

として考えることであり,とくに aK=Gを用いることである.この等号を認めれば

 aK⊆G∧Ka⊆G

より

 aK=G

 Ka=G

同一性規則から

 aK=Ka

という自明な証明が与えられる.今回は,部分集合について等号関係をぼかした

 A⊂B  (真部分集合とは限らない)

を用いてきた.もし,今が数学の変革期に該たるなら

 A⊆B

を用いて行くことも考える必要がある.ただ,このような等号関係を認めると,準同型定理の無効化,ひいては同型概念が無用になる.それなので,今後しばらくは真部分集合であるか否かをぼかした A⊂Bという記号で考える.

(ⅱ)について

(ア)  αが群準同型写像であること

 I:=\mathrm{Im} f

と置く. I⊂G'より Iは群である. G/Kも群である.

 α:G/K→I

 aK \mapsto α(aK)

 α(aK)=y

 (G, \circ)

 (G', *)

 ∀x=[a,b,c,e]_G

 ∃1y=[d,m,n]_I

に対して αが群準同型写像であることを示す.そのために

 α(aK\circ bK)=α(aK)*α(bK)

が成り立つことをいう.

 α(aK\circ bK)

 =α(abK) 剰余群の演算の定義

 =α(cK)   a\circ b=c, 群の演算で閉じている

 =d

 =f(e)   dはIの元

 =e

である.一方

 α(aK)*α(bK)

 =d*d

 =f(e)*f(e)   d=f(e)となるように選ぶ

 =f(e\circ e)   fは群準同型

 =f(e)   単位元の作用

 =e

である.それゆえ

 α(aK\circ bK)=α(aK)*α(bK)

が成立する.

 

写像 αが与えられているので, yについて自由に選ぶことができる.つまり,もし写像が与えられていなければ,これは物自体の証明となってしまう.

 

(イ)  αが単射であること

 aH≠bHを仮定する.このとき α(aK)≠α(bK)を示す. α(aK)=yに対して

 α(aK)=m

 α(bK)=n

 m≠n

となるように選ぶ.写像の一意性より

 α(aK)≠α(bK)

を得る.

(ウ)  αが全射であること

 改めて

 α:G/K→I

 aK\mapsto α(aK)

 α(aK)=y

 α(G/K)=\{y∈I|y=α(X) (X∈G/K)\}⊂I

を考える.このとき α(G/K)=Iを示す. Iの内包より α(G/K)⊂Iであるから

 I⊂α(G/K)

を示せば十分である.

1 (1)  ∀s[s∈I] 前提

1 (2)  a_1∈I 1. ∀-除去

3 (3)  a_1∈α(G/K) 仮定 ☆

1 (4)  a_1∈I→a_1∈α(G/K) 2-3. →-導入

1 (5)  ∀s[s∈I→s∈α(G/K)] 4. ∀-導入

☆について

 α(G/K)=\{y∈I|y=α(X) (X∈G/K)\}⊂I

 α(G/K)の元は Iの元でもあるので,このような仮定は許される.

 以上より, αは同型写像であることがわかるので,求める群同型

 G/\mathrm{Ker} f \cong \mathrm{Im} f

を成す.

  • 結果

 G/K→α(G/K) 同型写像

より集合族G/Kを集合α(G/K)として扱うことができる.