とする.このとき
が成立する.但し
である.
(証明の方針)
群の単位元について
とはどういう意味だろうか.
s.t. ()
つまり,というのがに存在するときに,任意のの元について条件をみたす.が存在しないときも,その条件で書ける,と解釈できる.
一方,1936年までの抽象代数学では
s.t.
という数学だった.この記号の意味は,任意のの元に対して,条件をみたすようなが存在する,である.もちろん,がに存在しない場合も含まれる.これだけだとよくわからないので,次のように区分する.
① ∃∀型
② ∀∃型
とする.このとき①から考えてみる.①はがに存在するときに群を定義している.もし,がに存在しなければ,その集合は群ではない.そして,群でない集合はいま思考しない.
それに対して,②はの任意の元に対してがに存在するときに群を定める.また,の任意の元について,がに存在しないときも,群を定義している.このような比較から,私も①の∃∀型で群の単位元を定義したいと思う.
さて本題に入る.
(ア)
(イ)
をみたすようなが唯一であることを示したい.そもそも,ものが唯一であるとは
のことだった.そこで,が順序としての中の1番目であり,それが個数として1個であることを証明する.
- 目標
(ⅰ) まず,がの中で1番目だと仮定する.このとき
であるので,はの中で1個であることがわかる.
(ⅱ) 次に,がの中で1個だとして,がの中で1番目であることを示す.の単位元の定義より
s.t. ()
であるから,はの中で1番目である,と指定すればよい.したがっては
をみたすことがわかる.