日記2

自然演繹を積極的に用いたい.

関数の極限値が唯一つであるとはどういうことか?

 私は以前から,1個と1つは違う観念であり,1個という数え方は計量数を指し,1つという数え方は順序数である,と言ってきた.今回,関数の極限値は唯一つである,という場合に極限値を順序数で数えるとはどういうことなのかを考えたい.

例 正弦関数のとき

 \displaystyle\lim_{x→0}\sin x

について

 \displaystyle\lim_{x→0}\sin x=0  ( x:=π)

 \displaystyle\lim_{x→0}\sin x=0  ( x:=2π)

このように表示すると,もし(正弦)関数の極限値が唯一つであることを「1個」と考えてしまったときに,この表示は誤りである,という結論を出すことになってしまう.しかし,「1つ」と考えれば,この表示は誤りではない.なぜなら,1つという順序数は文字量について何も言っていないからである.たとえば,1つという順序数のうち,文字量が1個のこともあれば,文字量は3個のこともある.今回の極限値の量は順序数が1つで,文字量が2個の関数である,ということがわかる.すなわち,極限値0が順序数1つで,任意の xが2個定められている,という状況である.もちろん,極限値の量は xの定義に依存するので,極限値の数量が今回のような結果ではないことも十分起こり得る.

○:文字量

●:順序数

とする.このとき

文字量が2個で順序数が1つのときは

●○

と表す.

  • 補足

 極限値 xのとり方に依存しているので,1個の場合もあれば複数個の場合もある.しかし,極限の唯一性というのは,たとえ何個かの xのとり方があっても,1つに収束するということを意味する.