日記2

自然演繹を積極的に用いたい.

抽象化(形式化)の限界

 \mathbb{N}:自然数全体の集合

 \mathbb{Z}:整数全体の集合

 x,y,z,......:1つの束縛変数

 a,b,c,......:1つの自由変数

とする.このとき

 \mathbb{Z}⊂\mathbb{N}

は成立するか?

(証明の方針)

 ∀x∈\mathbb{Z}  x∈\mathbb{Z} ⇒ x∈\mathbb{N}

i.e.

 ∀x[x∈\mathbb{Z}] \vdash ∀x[x∈\mathbb{Z}→x∈\mathbb{N}]]

を試行する.もし,記号の一切の中身を問うことをしなければ,この判断も真と成る.

1 (1)  ∀x[x∈\mathbb{Z}] 前提

1 (2)  a∈\mathbb{Z} 1. ∀-除去

3 (3)  a∈\mathbb{N} 仮定

1 (4)  a∈\mathbb{Z}→a∈\mathbb{N} 2-3. →-導入

1 (5)  ∀x[x∈\mathbb{Z}→x∈\mathbb{N}] 1,4. ∀-導入

 この場合,(4)で記号の中身を問う必要があることがわかる(ここで意味論的に実証する).たとえば -1∈\mathbb{Z}に対して, ¬(-1∈\mathbb{N})であるから,(4)の判断は偽である.したがって,(1)から(5)を導出することはできない.

(証明)

 前提

 ∀x[x∈\mathbb{Z}]

に対して,∀-除去を適用する.このとき a∈\mathbb{Z}であり, a∈\mathbb{N}を仮定すると,→-導入により形式的に

 a∈\mathbb{Z}→a∈\mathbb{N} ☆

と書くことができる.しかし,この判断は偽であるので,命題は不成立である.▢

  • まとめ

 論理学の目的は,判断を記号化することである.しかし,それには限度があって,たとえば,この部分集合の例のように(4)で,どうしても記号の意味を問う必要が出てくる.判断が偽であることを示すことは,比較的容易であるが

 ∀x[x∈\mathbb{N}] \vdash ∀x[x∈\mathbb{N}→x∈\mathbb{Z}]] ①

の場合に(4)の実質をどのように記述すべきだろうか.すべての自然数は整数に属することは直観でわかっている,というように,直観でわかっているものしか,思考できないのだろうか.①の(4)について考えてみたい.

1 (1)  ∀x[x∈\mathbb{N}] 前提

1 (2)  a∈\mathbb{N} 1. ∀-除去

3 (3)  a∈\mathbb{Z} 仮定

1 (4)  a∈\mathbb{N}→a∈\mathbb{Z} 2-3. →-導入

1 (5)  ∀x[x∈\mathbb{Z}→x∈\mathbb{N}] 1,4. ∀-導入

 このような(4)の場合に(4)が偽であると仮定して(後件否定)みよう.これも証明の方針で書くべきことだと判断した.

1 (1)  a∈\mathbb{N}→¬(a∈\mathbb{Z}) 

i.e.  ¬(a∈\mathbb{N}→a∈\mathbb{Z}) 仮定

1 (2)  ¬(a∈\mathbb{Z}) →-除去

1 (3)  \perp ¬-除去

   (4)  ¬¬(a∈\mathbb{N}→a∈\mathbb{Z}) ¬-導入

   (5)  a∈\mathbb{N}→a∈\mathbb{Z} DN規則

 これで確かに部分集合成立の命題は示された.▢

  • まとめ

 直観でわかることの記号化に成功した.