- 概念相互の関係による分類
① 同一概念と等価概念
同一概念:内包・外延ともに同一な概念
例
「とうなす」と「かぼちゃ」,「父」と「男親」,「父母」と「両親」など
等価概念:内包は異なるが外延は一致する概念
例
「日本の首都」と「東京都」,「武士の魂」と「刀」,「等辺三角形」と「等角三角形」など
☆ 同一概念はただ「AはAである」という同一原理の使用の際以外にあり得ない,という考えもできる.
② 上位概念と下位概念(類概念と種概念)
ある概念の外延は,もう一個の概念の外延に包摂せられている,という関係がある.この外延の,より大きい概念を上位概念(類概念)といい,それに包摂される外延の,より小さな概念を下位概念(種概念)という.
直接上位にある類概念を最近類といい,直接下位にある種概念を最近種という.そして,もはやそれ以上不可分な最低の下位概念に達するとき,これを最低種すなわち,個体とよぶ.逆に,より外延の大きい上位概念を追うとき,もはや他のものの種概念となり得ない最高の類概念に到達する.これが最高類である.すなわち,範疇(カテゴリー)という.
実体,関係,性質などそれぞれ分類原理によって,それぞれの体系が構成される.
例 最高類
人類学:人類
動物学:動物
論理学:概念のすべてを網羅するもの
アリストテレスは次のように範疇をたてた:
(1) 実体:ソクラテスは「人間」である
(2) 分量:ソクラテスの体重は「四十五キロ」である
(3) 性質:彼は「有徳」で「大胆」である
(5) 能動:彼は弟子を「教えている」
(6) 受動:彼は「投獄される」
(7) 場所:彼は「獄中」にいる
(8) 時:彼は「今」獄中にいる
(9) 状態:彼は今「座っている」
(10) 様態:彼は「着物をきている」
- カントの範疇
量:単一性,数多性,全体性
質:実在性,否定性,制限性
関係:属性と実体性,因果性,交互性
様相:可能性(非可能性),現実性(非現実性),必然性(偶然性)
これには12の判断の形式が対応する.
量:単称判断,特称判断,全称判断
質:肯定判断,否定判断,無限判断
関係:断言判断,仮言判断,選言判断
様相:蓋然判断,実然判断,必然判断
③ 並位の関係にある概念
同一の類概念の中に包摂される概念の関係を並位概念というが,次の四個の種類がある.
(1) 選言あるいは離接概念
同一の類概念に属し,その範囲がそれぞれ全く違う概念をいう.たとえば,動物と植物,赤色と青色など.ある類の選言概念をことごとく列挙すれば,その類の外延を完全に覆い尽くすことになる.
(2) 交叉概念あるいは交錯概念(交互概念)
二個の概念が一部分重なり合っているもの.たとえば,学生と青年,運動家と勉強家などをいう.しかし,これは論理的に不明確であるので,避けなければならない.
(3) 相関あるいは相対あるいは関係概念
二個の概念が互いに他方の概念の性質を予想し,必然的な意味の連関を成しているような関係にある概念をいう.
例 君と臣,師と弟子,因果,目的と手段,親子,夫妻,兄弟,内外,表裏,光と影など.
そうして,その両者を相関させている一定の原理が必ずある.君と臣というとき,そこに支配と服従という基礎が考えられる.これを関係の原理(関係の基礎)とよぶ.それゆえ,君と国民では,国民の概念の中には服従ということが必然的に含まれているわけではないから,相関概念とならない.
(4) 矛盾概念
一方を認めれば,必ず他方を否定することになり,一方を否定すれば必ず他方を認めることになるような関係にある二個の概念をいう.つまり,これが矛盾許容論理でいう強選言の根拠である.すなわち,この関係にあっては,中間の第三者は認められない(排中律).それゆえ,矛盾概念は両方を共に肯定することも,否定することもできない.必ずどちらかを肯定し,どちらかを否定せざるを得ないのである.
例
動と静,生と死,動と不動,有形と無形,有機物と無機物など
動と不動のように,否定語を附加して矛盾概念をつくる場合,もとになる概念を積極概念といい,不・無・非などの否定語のついている方を,消極概念という.しかし,否定語をつければ必ず消極概念であり,矛盾概念となるとは限らないことに注意を要する.
たとえば,幸と不幸,慈悲と無慈悲などを考えれば,不幸,無慈悲はある状態,性質を積極的に意味しているから,消極概念ではなく,それ自身積極概念である.したがって,幸と不幸,慈悲と無慈悲は矛盾概念ではない.
(5) 反対概念
幸と不幸というある人間の状態,慈悲と無慈悲というある性質を考えると,その中間にいくつかの状態あるいは性質を考えることができる.幸福ともいえないが,不幸でもない程度の状態もある.共通な一般者の地盤の上で,その性質の対立する両極端を表すような関係にある概念を反対概念という.
例 白と黒,善と悪,明と暗,大と小など
それゆえ,反対概念にあっては,両者の間に中間的存在が考えられるので,反対概念は両者を共に肯定することはできないが,共に否定することはできるのである.なぜなら,中間の状態をとることができるからである.この点で,反対概念であるか,矛盾概念であるかを見分けることができる.
(6) 不等概念あるいは異類概念
概念の内包に関して,何らの共通点もなく,いかなる関係でも比較できない概念相互を不等概念とよぶ.
例 正直と三角形,論理学と味噌汁,学生と豆腐など
しかし,これは我々がそこに関係を見い出さない限りで不等概念というのであり,何らかの関係が見い出されるとき,これは不等概念ではなくなる.